1.低在老(特別支給の老齢厚生年金)とは?
2.在職老齢年金とは?
3.高年齢雇用継続基本給付金、高年齢再就職給付金、再就職手当とは?
4.国民年金の任意加入は必要?
5.妻(専業主婦)の老齢基礎年金や税金はどうなるの?
6.高在老(65歳からの本来の老齢厚生年金)の裁定請求は必要?
低在老とは、一般的には厚生年金の加入労働者が、60歳から65歳の間で会社を退職した場合に支給を受けることができる老齢厚生年金のことをいいます。
現在は法令により、定年延長や再雇用等の方法により65歳までの雇用が事業主に義務づけられていますので、60歳代前半で会社を退職する人は少なくなってきていますが、それでも何らかの事情により退職される方もおられます。 ただし、60歳代前半の人が全てがこの老齢厚生年金を受給できる訳ではありません。
具体的には、男性は昭和36年4月1日以前生まれの人、女性は昭和41年4月1日以前生まれの人が対象です。(女性でも国家公務員共済や地方公務員共済、私学共済等の被保険者期間を有する人は昭和36年4月1日以前生まれの男性と同様になります。)
被保険者期間は1年以上であることと、保険料の納付済み期間10年以上が最低条件です。例えば、厚生年金加入が1年で、共済組合の組合員期間が9年の場合、それぞれ厚生年金1年と共済年金(正しくは2~4号厚生年金)9年分に相当する年金が受給できることになります。
年金額は、報酬比例部分のみです。(共済年金は職域加算が付きます。)また、44年以上の長期加入者等はさらに定額部分として老齢基礎年金に相当する額も加算されることがあります。
昭和36年4月2日以降生まれの人には、この低在老はありません。その代わりに65歳からの本来支給の老齢厚生年金を繰り上げ請求することができます。ただ、当然ながら減額支給となります。
ここで注意が必要なのは、低在老は請求せずにすえ置いておいても増額はされません。また、時効は5年です。
60歳代前半で退職する場合、次の3つのケースが考えられます。
一つ目は一旦退職し、退職金を貰ってから一日も空けずに再雇用されるケース、
二つ目は一旦退職した後で1年または2以内に再就職するケース、
そして、三つ目が完全退職し、しばらくは再就職しないケースです。
在職老齢年金とは、一つ目と二つ目のケースが該当します。つまり老齢厚生年金を受給しながら給与収入も得る場合ですが、多くの場合賃金は現役時代より低下します。
同一労働同一賃金が大原則ですが、高齢になれば若い世代と同様の就労を維持することは困難になります。また、給与と年金の両方ともを得るとなると少し貰い過ぎと批判されるでしょう。
そこで一定の給与収入以上がある場合に、厚生年金がカット(調整)され支給されます。具体的には総報酬月額相当額と年金の1カ月分の合計額が28万円を超えるとその超えた分の2分の1に相当する額が年金からカットされます。
総報酬月額相当額には1年間のボーナスも含まれますので、仮に厚生年金が月12万円で標準報酬月額が16万円、ボーナスが年間24万円だとすると、
(30万円-28万円)÷2=1万円⇒停止額
ここで注意が必要なのは、これが適用されるのは厚生年金の被保険者であることです。
そして、総報酬月額相当額が47万円を超えた場合や基本月額(年金額の1カ月相当額)が28万円を超えた場合は更に別の計算式により支給停止となります。
実際、60歳時に新規裁定請求書を提出しても年金証書だけ送られてきて、完全退職するまで年金は全額支給停止というケースもあります。
次に雇用保険との関係です。
高年齢雇用継続基本給付金は、一旦退職し同じ会社等に継続勤務したような場合、一定の条件のもと60歳到達時の賃金と比較して75%未満になった時、雇用保険から支給されることがあります。その額は支給の対象となった月給の15%までです。
ここで注意することは、受給期間は60歳から65歳までの5年間のみなので、仮に64歳で退職し、1年間(65歳まで)勤務を延長した場合は、1年間だけ受給できるということになます。
それと、手続きは原則として事業主を通じてハローワークに書類を提出することです。
支給額は高年齢雇用継続基本給付金と似ています。基本手当の算出の基礎になった賃金日額の75%を下回った場合に、65歳までの間、1年間または2年間だけ賃金額の15%まで支給されます。
ここで注意することは、この手続きも原則的には新たに雇用された事業主を経由して行わなければならないことです。ただし、やむを得ない理由があるときは、直接ハローワークに申請することも可能です。そして、賃金の15%分が雇用保険から支給された場合は賃金の6%相当額が年金からカットされます。(高年齢雇用継続基本給付金も同様)
再就職手当は、一旦退職し安定した職業(1年以上の就業)に就いたときに一定の条件のもと支給される場合があります。
ここで注意することは、再就職手当と高年齢再就職給付金をダブルでは貰えず、どちらか一方を選択しなければならないということです。
厚生年金の被保険者期間は同時に国民年金の第2号被保険者期として算入されます。つまり、厚生年金に加入してい間は国民年金保険料は払わなくても良い訳です。ただし、その期間は20歳から60歳迄の期間なので、仮に24歳で就職し、64歳まで同じ会社に40年勤務したとすると、国民年金の満額に達する40年掛けたと思いがちですが、そうはなりません。この場合、
60年-24年=36年となります。よって、65歳から貰える国民年金の老齢基礎年金は
780,100円×432÷480=702,090円となり、満額にはなりません。
そこで必要になってくるのが、国民年金の任意加入です。
ここで注意したいのは、厚生年金加入中に国民年金の保険料は納付できないということとです。そして、任意加入できる期間は65歳到達前迄です。
上記の例でいうと、仮に64歳の退職時、直ぐに国民年金に任意加入しても不足期間4年の内、1年分しか加入できません。
(ただし、※60歳から64歳までの厚生年金被保険者期間は退職時改定により経過的加算として厚生年金に上乗せされます。)
上記の例で妻が5歳年下で専業主婦又は扶養範囲のパートタイマーだった場合、国民年金第3号被保険者として夫が退職する迄は保険料は払わなくても国民年金の納付済み期間として算入されますが、夫が退職した時点で妻はまだ59歳なので、直ぐに市区町村役所に出向き国民年金第1号被保険者として届け出をして国民年金保険料を納付しなければなりません。
ここで注意したいのは、国民年金第3号被保険者として参入される期間は昭和61年4月以降の期間なので、それ以前に任意加入により国民年金保険料を払っていない場合は、納付済み期間が40年に満たないので、妻も夫と同様に60歳以降も国民年金に任意加入した方が良いことになります。
任意加入の場合、保険料の払い込み方法は原則として口座払い込みとなり、1年または2年前納が選択できます。
また税金に関しては、この払込保険料は国民健康保険料や介護保険料等(税と呼ぶこともあります。)と同様に翌年の所得税の社会保険料控除の対象になりますので、忘れず確定申告した方が良いです。
妻名義で送付された控除証明書を夫の確定申告に使っても問題ありません。何故かというと、国民年金保険料や国民健康保険料は、そもそも世帯主にも納付義務があるからです。
※ 収入が公的年金のみの場合、必ずしも確定申告の必要はありませんが、そういう場合でも住民税の申告はしておくと良いです。この場合は税務署ではなく区役所等から住民税用の申告書用紙を取り寄せ市区町村に申告します。
基礎控除や扶養控除額が、所得税では38万円ですが住民税では33万円です。つまり住民税の方が税算定の基礎となる所得金額は大くなります。そして、それを基に住民税だけでなく介護保険税も計算されます。 さらに、国民健康保険税の控除額には社会保険料控除と配偶者控除が無いので、総所得金額に直接課税されることを知っておきましょう。
65歳から支給される老齢厚生年金には、妻が65歳になるまでは一定の条件のもと加給年金が加算されます。金額は約224,500円ですが、それに特別加算額165,000円(受給権者が昭和18年4月以降生まれ)が更に加算され、加算額合計で約390,000円になります。
ここで知っておきたいのは、この二つの加算(合計約390,000円)は、国民年金の満額(780,900円)の約2分の1に相当します。これは夫婦が二人とも厚生年金加入の世帯総収入との格差を是正する為のものであるということです。
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